幸せは区切れるのか

 五億円で買えるものは、区切れるものです。

ペン一本。ステーキ一枚。UFOキャッチャー1PLAY。

人間が区切れるものは買うことができます。

 

しかし雲は区切れません。

刻々と移り変わっていくからです。

 

たとえば、いま、だれかが、

「あそこのあの雲は、いまから、私のもの。五億円で売ります!」

と言って、他のだれかが、

「あ、買います」

と言ったら、雲だって買えるかもしれません。

そのとき、ひとは、雲を区切ってしまったのです。

いまのところ、そんなふうにして、雲を区切ることは、世界中に広がってはいません。

どこかでは雲も売られているかもしれないけれど。

 

幸せは、区切ることができるでしょうか。

できないと思います。

幸せだった体験の数をかぞえることはできるかもしれません。

しかしそれは幸せそのものを区切ったことになるでしょうか。

体験を区切っているだけです。

 

幸せは、モノではない。

 

モノによって幸せになることはあります。

しかし幸せそのものが売られていられるのを、私は見たことがありません。

 

幸せは、概念である。

 

概念は、売られていない。

 

概念は、無料である。

 

さて、つづきは次回、ということにしましょう。